廊下の突き当たりの棚の上にそれはあります。
暖色系の灯りに照らされて、青く光る「手」のオブジェ。
長女が中学校の時、授業で作ったものです。
あれから5年。
最終的に決まった置き場所は廊下の突き当たりの高めの棚の上でした。
子供たちの作品はたくさん。
それぞれに思い出がありますし、持ち帰った後、しばらくの間は誇らしげに飾られています。
それがたくさん溜まってくると、古いものから、納戸にしまわれます。
そこもいっぱいになると写真を撮ってから、さよなら・・・(ごめんなさい)。
手のオブジェに関しては、何の素材でできているのか、10cm✖️20cm✖️15cmほどの大きさがあり、なおかつ、重い。
心情的にも物理的にも簡単に処分できるような物ではないんです。
ふと、思い出しました。
私の実家の押し入れに長いことしまわれていた「私の歌う顔」の粘土細工。
母も同じような想いで、置き場に困り、とりあえず「押し入れ」にしまっていたのでしょう。
「私の歌う顔」も相当な代物でした。
そこにあることがわかっているのに、つい忘れて押し入れを開けてしまいます。
そのたびに、私が(の粘土細工が)口を大きく開けて、歌っているのですから、毎回、本気でビビります。
私が嫁いでから、いつの間にかその粘土細工は見なくなりました。
私は思うんです。
先生、もっとずっと飾っていられるような、花とか動物とかの可愛らしいものを題材にしてくれないか、と。
長女には言えませんが、私はその手を「お化けの手」と心の中で呼んでいました。
そう、つい昨夜まで。
なぜなら、その手はお化けのように垂れ下がっているからです。
昨夜、そろそろ寝ようかと次男とその廊下を通りかかった時、次男がそのオブジェをじっと見つめていました。
「怖くないの?」(長女よ、失礼な母で、ごめんなさい。)と次男に聞きました。
何と言っても怖がりの次男ですので、私の中では「お化けの手」とネーミングされているその手を次男も怖がるっているだろうと思っていたのです。
じっと見ていた次男が言いました。
「お姉ちゃんは、昔っから本が好きだったよね。」
「そうだね。」
「これってさ、本のページをめくっている手じゃない?」
へ?!
目から鱗です。
私はずっとそこに置かれていたそのオブジェに作品のタイトルの紙がついていることに気づきました。
5年前の古くなったその紙は乾燥していて、触ると小さくカサッと音を立てました。
タイトルの書かれているその紙をめくってみると・・・
「ページをめくる手」という文字が!!
次男ビンゴ!!
とまあ、そんなちょっとした騒動が起きたのでありました。
その瞬間から「お化けの手」は「ページをめくる手」に塗り替えられ、今後もしばらくはそこに飾られることが決定いたしました。
持ち帰った直後はちゃんと「ページをめくる手」としてそこに置かれたのでしょう。
忘れん坊の母の記憶とは何と恐ろしい・・・薄っぺらいものです。
長女よ、本当にすまなかった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪