高校の卒業式
朝から緊張気味の長男。
会場までの道を間違えないかと心配で早めに出たが、受付の20分前に到着し、「早すぎる!!」と駐車場でバトルとなった。
「遅れるより早い方がいいよ。」
そんな私の言葉は耳に入らず、「早く着くと待っている時間が辛いんだよ。」と長男。
「道が混んでるかもしれなかったし・・・。」
と続けたが、怒っている彼には届かない。
会話がかみ合わない状態が続き、私はいつものように口をつぐんだ。
そうすると、面白くない長男が自分の主張を捲し立てる。
いつものパターンだ。
長男の緊張が伝わってくる。
待つ時間が辛いのも分かる。
誰もがそうであるように余裕のない時は自分の意見が正しいと思うし、「人がどうしてそう思うのか」とか「そんな考えがあるのか」なんて想像できない。
しばらくしてから私は言った。
「今日から小言はもう言わない。」
「大人として接する!!」
・・・言ってしまった。
そんな宣言してもいいのか?
まだ18歳だよ。
でも、その一言で長男の口は閉じられた。
時々、私のワードが彼にヒットするときがある。
前言撤回とも言えず、その件はそっとしておくことにした。
卒業生からの歌の披露などもあり、卒業式は和やかに進んだ。
ふと、中学の卒業式が思い出された。
どうしても参加できなかった長男は校長室で個別に校長先生から卒業証書を頂いた。
担任の先生や教頭先生の配慮だった。
それが、高校ではちゃんとみんなの前で受け取っている。
そんな長男が眩しく見えた。
式の後、いつも話していた子やお世話になった先生達と写真を撮ったりして上機嫌となった長男。
「普通の高校とは違って、毎日会う訳じゃないからそんなに仲良くなれない」と言っていた彼だが、それなりにコミュニティーが出来ていたのだと嬉しかった。
少し名残惜しい気持ちで帰宅した。
高校を卒業し、進学はしないと決めた長男。
自分でうちの会社で働くことを決め、友達より少し早い社会人となる。
また勉強したくなったらいつでもできる。
今は彼の進みたい道を成長と共に見守りたい。
そして、彼のためにもこの小さな会社を守らねばと決心した私である。
帰宅後、彼が脱いだスーツやワイシャツの行方が気になり、小言を言いそうになってハッとした私。
というか、記憶すらない状態でいつも小言が出ている事に気づいた。
忘れん坊ママであるが、さすがに舌の根も乾かぬうちに言い出すとは、我ながら驚く。
幸いにも気づかなかった長男。
「小言はもう言わない」・・・努力はしようと思う。
でも、大人として接するって、一体どうしたらいいんだ?