hanasakuchildのブログ

おとぼけママのハッピーブログ

遠い記憶に癒される


何年かぶりに車で母校の前を通り過ぎた。

3年間通った高校は、あの頃から古い校舎であったが、30年たった今はさらに色あせ、心なしかあの頃より小さく感じた。

 

地元では唯一の進学校

中学時代、この高校に入るため、猛勉強をした記憶が蘇る。

その頃、仲の良かった男の子と共に。

 

彼はクラスで1番頭が良かった。

静かで、いつも落ち着いていた。

優しくて低い声。

そして、絵が上手だった。

 

クラスで人気者の目立つ彼が何故か、地味な存在感の薄い私を気に入ってくれた。

その頃好きだったアーティストが同じだったことが、最初のきっかけだったように思う。

彼は中学を卒業する頃、私に親友という称号をくれた。

その称号は嬉しくもあり、誇らしくもあり、淋しくもあった。

 

私が同じ高校を目指していることが分かると彼は授業でもらったプリントを無造作に渡してきた。

そのプリントの裏には

めざせ!!〇〇高校合格!!と大きく書かれていた。

勉強時間の目標が書かれ、その横には、必死に勉強する私の似顔絵があった。

 

高校には二人とも無事に合格した。

クラスは違ったが、時々、帰りが一緒になることもあった。

そんな時はドキドキしながら、彼と肩を並べて帰った。

 

3年生になり、選択授業のクラスが一緒になった。

同じクラスで過ごせることがただただ嬉しかった。

ある時、彼は私の机の前に立ち、私のノートにサラサラッと一言書いて離れた。

そこには「彼女 出来た。」と書いてあった。

 

その時、私はどんな顔をしていたのだろう。

長い長い片思いに終止符を打つ時が来たのだと思った。

片思いは喜びと悲しみがセットでやってくる。

まるでジェットコースターのように。

こちらの理由ではなく、相手に合わせてやってくるのだから仕方ない。

そんな時はなんの準備もできないまま落ちていくしかない。

 

2日程して私は初めての告白をした。

振られるための告白はあの時だけである。

彼は「ありがとう」とだけ言った。

 

しばらくは会いづらいな、なんて思っていたのに、何と翌日にばったり会ってしまった。

廊下の向こうから友人とやってくる彼に私は引き返すこともできず、下向き加減ですれ違った。

彼は手を上げ、いつもの笑顔で私に笑いかけてくれたのだった。

 

その後もずっと友達でいられたのは彼のおかげである。

もう何十年も会っていないが、どこかでばったり会っても多分、あの頃のように話せるような気がする。

 

久々の校舎を見てそんな昔の記憶が蘇った。

片思いも悪くない。相手を思いやることで人は成長する。

心にポッカリと穴が開く、そんな経験も失恋をしたからこそ分かる痛み。

そこからどうやって気持ちを切り替えるかも学んだ。

 

もう随分昔の話だけれど、その頃の気持ちは今でも大切にしたい想いだ。

忙しさの中で、忘れかけていた遠い記憶。

たまにフッと現れて私の疲れた心を癒してくれる。