長男はアレルギー体質のため、家で犬を飼うことができなかった。
生き物好きの彼は犬の代わりに様々な生き物を捕まえては、飼育ケースに入れ、眺めていた。
いつだったか彼のために図書館でダンゴムシの本を借りてきたことがある。
食い入るように見た後、彼は言った。
「ダンゴムシ、飼えるって!!」
そこにはダンゴムシの飼育方法がイラストとともに載っていた。
「え?飼育?!」
私はダンゴムシが嫌いという訳はない。
そもそも嫌いとか好きとか考えたこともなかった。
虫好きの彼のために借りた本。
まさか飼育まですることになるとは思っていなかっただけだ。
飼育してみると、思いのほか楽だった。
キャベツなどの野菜くずを入れて置くとダンゴムシが食べる。
長男はリビングのテーブルに乗せての観察を希望したが、それだけは断固として阻止した。結局、飼育ケースは玄関に置き、時々リビングへ持ってきて観察した。
子供に言われてしぶしぶ飼ったダンゴムシであったが、脱皮を目にした時は思わず興奮してしまった。しばらく二人で飼育ケースを覗いて観察した。
ダンゴムシは彼が一番好きな虫だった。好きすぎて、のちに地元の新聞に彼の書いたダンゴムシの詩が載ることになる。
ダンゴムシを機に、コオロギ、カマキリ、キリギリス、鈴虫、サワガニなど様々な昆虫を飼育した。カブトムシはもちろん毎年我が家にいた。
金魚は2匹いるが、最盛期には10匹ほどいた。
興味のあることにはこだわり発動の長男。
「お祭りですくった金魚は病気を持っているかもしれないから別にしたほうがいい」
「尾びれの種類で金魚の泳ぐスピードが違うから傷つかないように分けたほうがいい」
一時期はカニの水槽も合わせると6ケースが玄関に所狭しと置かれた。
中学生になり長男は犬アレルギーが出なくなった。
彼は念願だった犬を飼いたいと言い出した。
やっぱり来た!!
これには、一度も生き物の世話をしたことのない父が大反対!!しばらくもめた挙句、根負けして、犬を飼うことになったのだった。
今では長男よりも愛犬の世話を率先してやっている父。
そして、頃合いを見ては服を買ってきて着せている。
服は可愛いが高いので、私に言わずに買ってくる。
毎朝、私より先に愛犬に話しかけ、時々、可愛く撮れたからと言って愛犬の画像を送ってくる。
結果オーライである。
私はやっと水槽の掃除から解放されると内心安堵したのも束の間、次男の生き物好きが発覚。また一からのスタートとなり、生き物飼育が始まっている。
水槽の中にはメダカが泳ぎ、飼育ケースには毎年カナヘビがいる。
彼の一番はカナヘビだ。
今では長男と結託。
一緒に捕まえに行き、飼育ケースに入れて玄関に置いてある。
母の許可など必要ともせずに・・・。
「もう何でも来い!!」だ。
また少し暖かくなると、虫たちの季節がやってくる。
次男の瞳が輝く季節だ。