「頭でっかち」
中学時代の友人が良く私にそう言った。
「考えすぎるんだよ!そんなに考えなくてもいいのに。」
彼女は自由だった。
考え方も行動も、容姿すらも自由。
他の子とどこか違っていた。
背が高く、長い脚。
長くウェーブがかった茶色の髪。
整った目鼻立ち。
大きくてキュートな口。
全て自分とは違っていた。
どこにも接点のないような私と彼女。
彼女がうらやましく、そして誇らしかった。
彼女に憧れる一方で、どこか自分とは違うと境界線を引いていた。
彼女とは高校を卒業した後から連絡が途絶えた。
数年前、久しぶりに彼女が連絡をくれた。
彼女は沖縄にいた。
開放感があって自由な彼女によく似合う場所だと思う。
「頭でっかちなんて言ったっけ?」と彼女は笑った。
「今は私の方が細かいよ。子育てでイライラしっぱなし。」
子供に振り回されている彼女が見てみたい…そんな気分になった。
屈託なく笑う彼女は変わっていなかった。
不思議なことに彼女との間の境界線はいつの間にか消えていた。
頭でっかちだった私。
今はどうだろう?
悩みは相変わらず次から次へとやっては来るが、今は「何とかなるさ」が口癖だ。
問題に向き合いはするが、自分の中で問答する習慣ができた。
「これは今考えて解決することか?」
自分の中の自分が答える。
「考えても解決しない。」
「じゃあ、考えない!」
今では、私も割と呑気に、自由に生きている。
ただ、出会いや経験が人を変えていくとしたら、彼女の影響力はかなり強い。
「彼女ならどっちを選ぶだろう?」しばらく、そんな基準があったからだ。
今は自分の基準で生きている。
今度、ゆっくり会おう。
そして、あの頃の話と今の話を行き来して、会えなかった空白の時間を埋めよう。